終戦記念日に寄せて – 劇団アトリエッジ舞台「流れる雲よ」公演、「モーリス・ベジャール・バレエ団」記者会見

382

〜 名古屋・大阪公演いよいよ開幕 〜

ミレニアムの初演から再演を続け、続けて、今年で18年目となる劇団アトリエッジ*1の
舞台劇「流れる雲よ」(第38回 ギャラクシー賞奨励賞受賞作品)は、
昨日から品川区の六行会ホールにて今年も幕を開けた。

世界の現代劇のカテゴリーを見渡しても、毎年再演を繰り返すということはけして多くはなく、例えそれが
小劇場であっても容易なことではない。まして、この作品は、必ず公演時期を終戦記念日の前後に定めて
行っているのであるから、毎年の公演会場の確保だけでも大変である。限られた時期の理由は、
特攻隊がテーマだからだ。自らの命を掛けて、米軍、米国に「特攻」した事を美化した作品ではなく、
「戦」の無い社会と、今日の日本の発展の礎になった普通の若者達への挽歌だからだ。

歌舞伎しかり、バレエしかり、作品は演者を変えて、生き続けて行く・・・・・
しかし、作品本体も時としてドラステックに変わる・・・・

「流れる雲よ」公演は、同会場にて昨年8月にも行われた。
筆者の昨年の劇評; 2016年 8月11&12日

「寅男君、お疲れ様です、
写真を撮ろうと思ったけど、げっそりしている貴方を見て手を止めました。それ程、
身を削るように作品を作り上げたのが分かったから。

昨年からしか拝見していませんが、舞台中に特攻隊員全員で踊られる「海軍体操」は格段に
進化しました。

『振付のディレクションはしたの?』との問いに、演出家の田中寅夫君は、はっきりと
『しました』と答えてくれました。

この振付は、座長市川氏がリーダー役の天野中尉役を演り続ける限りは、決定版として良いと思います。
前半の主役は天野中尉です、その中尉を市川氏が演じているからこそ成り立っています。
あのラップと独特の存在感は圧巻でした。余人をもって代えがたし・・・・・・
客席通路からの登場は、衝撃的であり、まるで神の降臨の如くでした。

他の特攻隊員の鍛錬(練習)はまだまだ必要ですが、振り付けは完成度が高く、この場面は、
前半の最初の見せ場であり、将来的に2幕物にした際には、この場面が山場になり重要です、
演出によっては、もっと膨らますこともできるでしょう。

昨年の版では全く思い出すこともなかったのですが、16年版では、
「故モーリス・ベジャール(昨年末に座長も感動した「ボレロ」を振付けたフランス人*2)振付の
『春の祭典』(春祭、と略されます)」を連想しました。
バレエ「春祭」は、ストラビンスキーの代表作の同名の曲に命育む春という季節への喜び、
新しい命の尊さ、力強い大地への賛歌を込めた作品です。
春、青春、そう、「流れる」の登場人物の多くは青春まっさかりの少年、青年達です、しかしながら
彼らは、「春祭」とは反対に、その若く美しい「命」を祖国に捧げることで、彼らの青春を昇華させる
のです。ベジャールの春祭とは対極の悲しく切ない、超coolな新「海軍体操」でした。

もし、振付のメルモ氏がベジャールの春祭をご覧になっているとしたら、日本が大好きだった
故ベジャール氏は、非常に喜ぶと思いました。彼女が直接観ていなくとも、彼女の師や、
多くの影響を受けた作品を観ていない筈はありません。 それ程、ベジャールの春祭とは大きな
作品ですから。
劇団アトリエッジ総出演の東京MXドラマ「えにしの記憶」*3ファンには、シーズン1でお馴染みの
「忠臣蔵」ですが、その「忠臣蔵」をテーマにしたバレエ作品「ザ・カブキ」を作ってしまったほど
日本通な方でした。

筆者は、前半の山場と言える「天野中尉の散華のシーン」にて、昨日、本日ともに拍手をしたくて仕方
ありませんでした。 散華の後、10分ぐらいは泣き、余韻に浸りたい・・・・
それは筆者だけではなかったと思います、「天野中尉の出撃シーン」を迎えると、
嗚咽を堪える震える声のハーモニーがどこからとなく、会場全体に広がりましたから。

上演時間も昨年よりもかなり長くなっていますので、2幕物に仕立てても十分でしょう。

もし、米国のトニー賞*4のように、リバイバル作品にも賞のカテゴリーがあれば、この作品は
必ずやリバイバル賞を獲得出来ると思いました。
松竹や東宝は、漫画原作の映画ばかり作らず、どうして、こういう素晴らしい演劇作品の映画化を
しないのだろうか。
この作品は、日本発のグランド・オペラも夢ではないから・・・」

ストーリは、
終戦前夜とも言える8月、敗戦の色濃い鹿児島特攻基地。若き特攻隊員たちは仲間と支え合いながら
限りある命を輝かせていた。若者達は、祖国、そして愛する妻子、父母を思い、守る為に出撃して行く。
そんな日々にも出会いはあり、愛情を育む女子学生と、特攻隊員・・・
神様の悪戯であろうか? 現代のラジオ放送の電波をキャッチして、日本の敗戦を知ってしまう
整備兵とその親友の特攻隊員。 8月15日の朝も、彼らは出撃して行く・・・・

17年版は、主題、演出家及び、一部出演者は同じであっても、全く違う舞台となった。
再構成することで、作品の主題によりフォーカスしたと言えよう。完成度の高い作品をスクラップ&
ビルドするのは英断とも言える。
しかしながら、あの神の降臨を感じさせた16年度版の「海軍体操」は、もう一度観たいものである。

東京公演2017年 8/16〜20日
会場:品川 六行会ホール  [品川区北品川2-32-3]

名古屋公演2017年8/22〜23日
会場:TOLAND [名古屋市中区大須4-11-5 観音ビル2F]

大阪公演2017年8/25〜27日
会場:朝日生命ホール(大阪市中区)[大阪市中央区高麗橋4丁目2-16 大阪朝日生命館]
(名古屋・大阪公演は、上演時間約1時間のダイジェスト版公演)

山形公演2017年9月1日(金)
会場:シェルターなんようホール[山形県南陽市三間通430-2]
[山形公演 予約フォーム] https://www.quartet-online.net/ticket/6whjs8m?m=0dbdcfe

昨年劇評でreferした「モーリス・ベジャール・バレエ団*2」の日本公演がこの11月に東京文化会館
にて行われる、それに先立ち、7月24日に大手町日経ホールにて大々的な記者会見が行われた。

http://www.nbs.or.jp/stages/2017/bejart/index.html

ジル・ロマン芸術監督と、本年で引退する那須野圭右氏。
(記者会見内容は改めてお知らせさせて頂きます、上記写真は筆者撮影)

*1 劇団アトリエッジ
2000年に設立、『PRAY(祈り)』と『PLAY(上演)』を基本テーマに、日本人としての『武士道』と『神道』の
尊さを伝えるべく、鋭さ(Edge=エッジ)を秘め、創造&活動を続ける演劇工房 (Atelier=アトリエ)。
日本の良さを内外に伝える為、歴史の真実を探り、タブーを破って、エンターティンメントの新しい
アプローチに挑戦し、小さなアトリエ公演から、大舞台に到る迄、あらゆるステージで、朗読劇、奉納劇、
音楽劇まで、挑戦している気鋭集団。主宰者の奈美木女史が、脚本家、演出家も兼ねる。

*2 モーリス・ベジャール(Maurice Béjart), バレエ「ボレロ」
1927年1月1日生、マルセイユに生まれる。父は哲学者ガストン・ベルジェ。
1941年、マルセイユでバレエのレッスンを始め、セルジュ・リファールから強い影響を受ける。
1959年、『春の祭典』が成功、翌1960年にはベルギーの支援を得て20世紀バレエ団を結成。同年
発表した『ボレロ』は、円卓の上でソリストが旋律を踊り、群舞がそれを取り囲むようにリズムを踊る。
早生した稀有なスターダンサーのジョルジュ・ドンが主演し、劇中でメロディを踊った映画
『愛と哀しみのボレロ』にて世界中で人気となる。ドン亡き後、シルビー・ギエム等が踊る。
1987年、本拠をスイス・ローザンヌに移し、ベジャール・バレエ・ローザンヌを創立。
その後数多くの作品を振り付け、2007年11月22日、80歳にて没。

*3 東京MXドラマ「えにしの記憶~江戸→東京どらま」
2014年10月からTOKYOMX初のオリジナル・ドラマ作品として放送される、今秋にはシーズン4が開始予定。
東京オリンピック開催となる2020年にむけて、東京で活躍する若手の舞台俳優たちが、東京=江戸に残る史跡
や古道を辿り、そこに刻まれた歴史のロマンを探訪するドキュメンタリードラマ。
シーズン1&2は、クールジャパン・コンテンツとして、経済産業省の助成金JLOP枠を獲得し、英語、
アラビア語化された。米国LAにてもオンエアー。
(海外放映(国内も)ご希望があれば、下記、yoshida 迄お問合せください。)

s.m. yoshida
Aug 17, 2017